大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和35年(ワ)6858号 判決 1965年5月26日

原告 新妻芳子

右訴訟代理人弁護士 高垣憲臣

折田清一

被告 穴水英三

被告 株式会社新工務所

右代表者代表取締役 新順一

右両名訴訟代理人弁護士 河野宗夫

主文

原告の請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

本件土地について原告主張のような原告名義の所有権移転登記があることは当事者間に争がないから、本件土地は原告主張の取得原因によって原告の所有に帰したものと推定すべきである。

しかるに、本件土地について被告主張のような蔡厚徳名義の所有権移転登記があることは当事者間に争なく、≪証拠省略≫によれば、原告が昭和三十四年五月十九日蔡に対し、同人の原告及びその夫治郎に対する債権の弁済にあてるため、同人が昭和三十二年八月十日本件土地の所有権を取得したこと及び右登記を承認したことを認めることができ、右認定に反する≪証拠省略≫の各供述記載は信用することができない。右事実によれば、仮に蔡が原告の白紙委任状を勝手に使用して右登記をしたとしても、右承認により本件土地の所有権は蔡に帰属するに至ったものというべく、≪証拠省略≫によれば、本件土地の上にあった植木、庭石、灯ろう、石塔その他の造園材料は造園のため設置、植栽されたもので、本件土地を一個の庭園に造成していたものであることが認められるから、右物件は本件土地の定著物と解するのが相当であり、従って、本件植木、庭石等が全部本件土地の上にあったとしても、特に右承認の際除外されたことの認められない本件においては、すべて本件土地と共に蔡の所有に帰したものと解するほかはない。

よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のように判決する。

(裁判官 田嶋重徳)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例